mitsukiのお気楽大作戦


手作り雑貨と原チャリ放浪と雑学で綴る、実践お気楽ライフ
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本当はもっと恐ろしい雪女

e0078674_14332100.jpgラフカディオ・ハーンの描いた「雪女」の舞台は、雪深い北国ではなく東京の調布なんだそうです。
意外に思うかも知れませんが物語をよく読むと、山を生業の場にしている老練な木こりなら山で遭難しても経験豊富な知識から危機を切り抜けられそうですが雪女にあっけなく殺されてしまいますし、どうやらこの木こりは雪には不慣れだったようなのです。
それならば雪国の話ではなく調布の話のほうが納得がいきます。
ハーンはこの物語を海外で紹介するにあたって「調布の百姓から聞いた、日本では有名な話」と注釈を入れてますが、日本の昔話に雪女の出てくる話は沢山あっても、雪女が人間の男と結婚する話は実は一つもないのです。
そのため、この話はハーンの創作だといわれているのですが、それならば何故わざわざ調布の百姓から聞いたと断っているのかわかりません。
調布という地名の「調」の字は、古代の税制の租庸調の調のことで調布は古代から布づくりの盛んなところでした。
布づくりが関係して、日本では有名な昔話で、「雪女」によく似た話といえば「鶴女房」(鶴の恩返し)意外に考えられません。
ハーンはもしかしたら「鶴女房」を聞いて「雪女」を描いたのではないでしょうか。
話はちょっとずれますが、古代の布づくりについて「魏志倭人伝」に興味深い記述があります。
種禾稻紵麻蠶桑緝績出細紵縑綿
要約すると、倭人は麻を植えて綿を作っているというのですが、麻から綿が作れるわけがありませんし、だいいち、綿は暑い地域の特産品で日本では三河の僧侶が室町時代に品種改良に成功して栽培できるようになるまで国産のものはありませんでした。
そうなると「魏志倭人伝」の記述が正しいのなら邪馬台国では中国人が綿織物だと見間違うほど上質な布を麻から作り出す技術力があったということになります。
鶴女房が決して開けてはならないと念を押して誓わせた扉の向こうに、邪馬台国の謎が隠されているのでしょうか。
その謎を解く鍵は、調布の布多天神の境内にあります。
「布晒しの碑」という石塔が建っていて
多摩川に 晒す調布 さらさらに 何ぞこの娘の ここだ愛しき
という、万葉集に収められている東歌が刻まれていて、ここが日本の布づくり発祥の地だと記されているのです。
麻布は川の水に浸してよく揉むと硬かった麻の繊維は柔らかくなって綿布のようになるのだそうですが、農閑期の冬に行われていたであろうこの作業、想像を絶するほど過酷なものであったに違いありません。
鶴女房が自らの羽を引き抜き赤裸になった素肌は、凍傷で爛れた皮膚を連想させます。

e0078674_14493484.jpg動物が人間に変身する話は、西洋のお伽話にもあるのですが「美女と野獣」「白鳥の湖」「カエル王子」のように、魔女の呪いによって動物にさせられた人間が元の姿に戻るという話がほとんどで、日本昔話のように動物が種も仕掛けもなく人間に変身する話はあんまし聞きません。
そして日本昔話に登場する動物は宝物を授けてくれるなど人間より優れた存在として描かれているのに比べ、西洋では動物は人間より劣った存在として描かれている話がほとんどです。
ハーンはこの点に留意して、西洋で日本の古民話を紹介するにあたって物語の主人公を鶴女房から雪女に書き換えたのではないのでしょうか。
もう少し、「鶴女房」と「雪女」の違いを比べてみましょう。
鶴女房の夫は鶴を助けるという善行を施していますが、雪女の夫は特に善い行いをしたわけではありません。
雪は時として猛威を振るい人を死に追いやる恐ろしい自然現象ですが、同時に大地を潤し生命の恵みをもたらします。
その姿はハーンが作品で描いた、何も悪いことをしていない人間を殺したかと思えば特に善いことをしてもいない人間を助ける雪女そのもので、自然は人間のために神が作ったものだから人間が自由に開拓してもよいと考える西洋文明に疑問を持ち、自然は人間のためにあるのではないから人間が勝手に手をつけてはいけないと考える日本文明を支持するハーンは、この物語を単純明快な勧善懲悪で終わらせたくなかったのでしょう。
鶴女房は夫に自らの羽を織り込んだ宝物を授けますが、雪女は10人の子を設けても出会った時と変わらぬ美しいままという以外、夫に宝物を授けない点にも注目。
宝物を手にした男は、仕事を怠けるようになり贅沢な遊びを覚え、どんどんダメ人間になっていきます。
お金は人を幸せにするどころか逆に不幸にするだけで、家族の団欒こそが本当の宝物だとハーンはいいたかったのでしょう。
動物も人間も同じ生命の価値があり、山や森には精霊が住まう、そう信じ続けることができたなら、幸せはきっといつまでも続いたでしょうに、自然の恵みや女性の労働力を単なるモノ=搾取の対象として見てしまった瞬間、宝物は幻となって消えてしまうのでした。
e0078674_1518745.jpgハーンの生きた時代、日本は厳しい選択を迫られていました。
明治維新、文明開化、富国強兵、恰好のいい言葉とは裏腹に、その財政を支えていたのは輸出総額の1/3を超える生糸の生産で、貧しい農家に生まれた少女たちは製糸工場で過酷な労働を強いられ逃亡防止のために鉄格子が張り巡らされた寄宿舎で、地獄のような生活を余儀なくされていました。
正月を故郷で過ごそうと、雪の降り積もる険しい道中で行き倒れ、郷里の親との再会を果たせず死んでいった少女たちも数多いと聞きます。
そんな彼女たちの悲しい最期に、ハーンは雪女の面影を重ね合わせたのでしょうか。
今度の選挙でも平成維新とか平成の開国とか世界に誇る日本の技術力とか、そういう、言葉だけは格好のいいことを軽々しく口にする輩がたくさんいますけど、そんな連中にこの国の舵を任せていいんでしょうか。
投票に行く前に、もう一度歴史を振り返って、この国にとって本当の幸せとはなんなのか考えてみようと思います。
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by sweetmitsuki | 2012-12-09 14:25 | おどろけー | Trackback | Comments(4)
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Commented by saheizi-inokori at 2012-12-09 21:31
深いですね。
同感です。
調布という地名に人々の苦役を感じるようになりました。
Commented by sweetmitsuki at 2012-12-10 00:21
佐平次さま
それでも布づくりに携わった女性たちは家族を養い国家の財政を担うことに歓びと誇りを持っていたと思います。
そんな人びとが報われる、そういう時代が来ればいいのですけど。
Commented by antsuan at 2012-12-11 10:36
ハーンは生類の憐れみというものをやはり完全に理解出来なかったのかも知れませんね。
かくいう日本人も敗戦後は、日本文明を全否定してしまいましたから、欲得よりも大切なものがあることをどうやったら再認識出来るのか、一から考え直さねばならなくなりました。
Commented by sweetmitsuki at 2012-12-11 20:30
あんつぁん
ハーンは「青柳ものがたり」という若い武士と柳の精霊が結婚する話を描いているのでそんなことはないと思うのですが「雪女」は出自のわからない話としてハーン最大の謎でもあります。
日本人が損得でしかものを考えなくなってしまったのは敗戦後のことなのかどうかそれは諸説ありますけど、今の若者はマンガ・アニメやTVゲームの影響で日本神話に興味を持ち始めています。
これからの世代に期待しましょう。
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