そばの怪異

e0078674_1640384.jpg秋もどんどん深まって新米も新そばも美味しい季節ですね。
「時そば」という落語の演目は、普段あんまし落語を聞かない人でも知ってるという、超メジャーな噺のひとつですが、この噺、よく聴くと不条理なことがたくさん出てきます。
まあ、不条理な話が落語なのですから、当然といえば当然なのですけど。
まず、そばのメニューといえばきつねかたぬきと決まっていそうなものですけど、ここではそんなメニューは出てこず、替わって、「しっぽく」と「花巻」という、見たことも聞いたこともないようなメニューが登場します。
名前からして、大昔からあると思っていたたぬきときつねは、実は悠久の歴史から見ればホンの新参ものに過ぎず、きつねやたぬきといった哺乳類が出現する以前は、しっぽくや花巻という、今では絶滅してしまった生き物が跋扈していたという、ロストワールドやジュラシックパークのような時代があったらしいのです。
さて、油揚げの乗っかったそばを、きつねというのは、なんとなくわかります。
油揚げはお稲荷さまの奉納品で、きつねはお稲荷さまの神使ですから。
でも、油揚げのお寿司をきつね寿司とは呼ばないのですから、油揚げのそばを稲荷そばと呼ばないのは変です。
これがたぬきになると、もっとよくわかりません。
一説によると、衣ばっかり多くて種の少ない天ぷらの乗っかったそばのことを、人を化かすからたぬきといい、遂には種を抜いてしまったからたぬきというのだそうですが、それが本当なら、そんな人をバカにしたようなメニューを堂々と看板に掲げる蕎麦屋の主人は、相当いい度胸しています。
別の説では、ラフカディオ・ハーンの「むじな」で、ノッペラボーのお化けがそば屋に化けて客を脅かしたことにちなんでつけられたそうですが、これだとたぬきの説明になってないうえに、そんなそば、怖くてとても食べに行けません。
それに、たぬきやきつねがあるのなら、動物つながりでかつお節を乗っけた「猫そば」や、妖怪つながりできゅうりを乗っけた「かっぱそば」がないというのはどういうことなんでしょうか。
自分で作って食べてみると、結構美味しいのですけど。
話を時そばに戻しますと、しっぽくというのは、今でいう五目そばのような料理なのですが、落語ではちくわし乗っかってません。
しかも一本丸ごと乗っかってるのではなく、良心的な店でさえ厚く切ったものを出し、そうでない店ではかんなで削ったような薄いもので、もっとひどい店になるとちくわ麩で代用していたそうで、ラーメンにおけるなると的な存在だったようです。
しっぽくが絶滅してしまった理由として、同じ五目そばの一種の「おかめそば」が流行ったから、といわれていますけど、最近ではおかめそばもあんまし見かけなくなってしまいました。
きつねとたぬき、恐るべしです。
そばという食べ物は、伝統という鎖に繋がれてはおらず、コロッケそばですとかカレーそばですとか、時代に合わせて常に新しいメニューをリリースしている斬新な食べ物なので、栄枯盛衰は仕方ないのかも知れません。
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by sweetmitsuki | 2013-10-27 16:59 | おどろけー | Trackback | Comments(4)
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Commented by chaiyachaiya at 2013-10-28 11:21
こちらは、昨日、山林系行事へのお手伝い出勤した家人が、「各地のそば競演もしてた。そばだけいっぱい食ってきた」と。お土産に、そば団子、で、そばな一日でした。
年越しそば、気力のある年末は、五目あんかけそば、作っていますです。
「かっぱそば」、やってみます!
Commented by sweetmitsuki at 2013-10-29 04:03
chaiyachaiya さま
新そばの美味しい季節ですね。
そば団子とか、そばは甘いものにもよく合うのでお汁粉の中にそばを入れて、小豆の好きな座敷童にちなんで、座敷童そばなんてのはいかがでしょうか。
Commented by saheizi-inokori at 2013-11-02 21:17
蕎麦はシノギですからね。
値段値段よ!
狸なら抵抗がなくて猫はちょっとと思うのは狸汁ってのがあるからでしょう。うまいそうです。
Commented by sweetmitsuki at 2013-11-03 07:58
そば一枚にとんでもない値段をつける店がありますけど、決してぼったくってるのではなく、それだけ手間をかけているのですね。
某ホテルの食品偽装問題も、ああまでして経費削減しなくては従業員に給料を支払えないという経営側の事情もあったのでしょう。決して擁護してるわけではないのですけど。
きつねとたぬきの化かし合いです。
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手作り雑貨と原チャリ放浪と雑学で綴る、実践お気楽ライフ
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