パルぱるぱる

e0078674_20394754.jpgラフカディオ・ハーンが編纂した「日本の怪談」の中に、「小豆とぎ橋」という話があります。

松江城の鬼門(北東)にある普門院というお寺の近くには、その昔「小豆とぎ橋」という橋がありました。
この橋には、夜な夜な女の幽霊が現れ、橋の下で小豆を洗っているという言い伝えがあり、この場所で謡曲「杜若(かきつばた)」を謡いながら歩くとよくないことが起きるので、決して謡ってはならないとされていたそうです。
ある日、この世に恐ろしいものなどないという豪胆な侍が、「そんなばかなことがあるか」と「杜若」を大声で謡いながら橋を通ったのです。
「ほら、何も起こらないではないか」と笑い飛ばしつつ侍が家の門まで帰り着くと、すらりとした美しい女に出会いました。女は侍に箱を差し出し、「主からの贈り物です」と告げるとパッと消えました。
いぶかしく思った侍が箱を開いてみると、中には血だらけになった幼い子どもの生首が入っていました。
仰天した侍が家へ入ると、そこには頭をもぎ取られた我が子の体が横たわっていたのでした。

なんともおぞましい話で、どうして謡を謡っただけなのにこんなことをするのか、罰を与えるなら本人を罰すればいいのに、どうして何の罪もない子どもを殺すのか、わけがわかりません。
それに、妖怪マニアじゃない人にはわからないと思いますけど、小豆とぎという妖怪は、河童や天狗ほど有名ではありませんが、北海道と沖縄を除く日本各地に伝承のあるとても知名度の高い妖怪です。
そして、どの地域でも小豆とぎは縁起の良い妖怪だといわれていて、娘を持つ女性が小豆を持って谷川へ出かけて小豆とぎに出会うと、娘は早く縁づくとか、貧乏な百姓の嫁取りの時に、何もごちそうができないのを見かねて小豆とぎが赤飯を山のように置いていったという話が伝わっているのです。
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私の知る範囲で、橋に憑き謡曲に怒る妖怪は、小豆とぎではなく橋姫です。
橋姫とはどんな妖怪なのか知らない人でも、丑の刻参りといえばわかるんじゃないでしょうか。
五徳を逆さにして蝋燭を立て被り、藁人形に五寸釘を玄翁でカンカンと打ち付ける呪いの儀式、あれを執り行うのが橋姫で、橋姫は実在の人物であるとされ、嫉妬に狂った女性が生きながらにして鬼になったといわれ、橋姫をあわれに思った後世の人が建てた神社も西日本には少なくなく、どちらかといえば妖怪より神様に近いのですが、やることがやることなので妖怪として扱われています。
神社に祀られてるといっても、御利益は縁切りだけなんですし。
もしかしたらハーンが小豆とぎと橋姫を聞き間違えただけなのかもしれませんが、松江の観光案内にも普門院の近くにかつて小豆とぎ橋という橋があったと書いてありますので、確かなことではありません。
小豆洗いが良い妖怪だといっても、よく読めば男女の仲のことばかりなので、縁結びの妖怪、小豆とぎと、縁切りの神様、橋姫は、もしかしたらどこかに接点があるのかも知れません。
さて、橋と小豆と唄にまつわる怖い話をもうひとつ。

昔々、幾度架け直しても川が氾濫するたびに流されてしまう橋があり、周りの村に住む人びとは大変困っていました。
その村の中に、川の氾濫で母親を亡くした、まだ小さな女の子が、父親と二人きりで暮らしていたのですが、不幸は重なるもので、女の子は重い病気にかかり寝込んでしまいました。
貧乏な父親は医者を呼ぶことができません。
「父ちゃん、あのね、小豆まんまが食べたい。」小豆まんまとは赤飯の事で、女の子の母親が生きていたころに、たった一度だけ食べた事があるごちそうです。
ですが家には、小豆どころか米の一粒もありません。
父親は寝ている娘の顔をジッと見つめていましたが、やがて決心すると立ちあがりました。
父親は可愛い娘のために、生まれてはじめて泥棒をしたのです。
庄屋の倉から一すくいの米と小豆を盗んだ父親は、娘に小豆まんまを食べさせてやりました。
こうして食べさせた小豆まんまのおかげか、病気はだんだんとよくなり、やがて起きられるようになりました。
元気になった女の子は家の外に出ていくと楽しそうに毬をつきながら歌いはじめました。
♪トントントン
♪おらんちじゃ、おいしいまんま食べたでな
♪小豆の入った、小豆まんまを
♪トントントン
その歌を、近くの畑にいた人が聞いていました。
「変じゃなあ、この家は貧乏で、小豆まんまを食べられるはずがないのだが。・・・まあ、いいか」と、そのときは、大して気にもとめませんでした。
やがてまた大雨が降り出して、架け替えたばかりの橋が、流されてしまいました。
村人たちは、村長の家に集まって相談しました。
すると、村人の一人が言いました。
「人柱を立てたら、どうじゃろう?」
人柱とは水神への生け贄として橋脚の下に人を生き埋めにして橋を作ることで、昔は結構あったことのようですがもちろん進んで人柱になる人はおらず生き埋めにされるのは罪人が一般的でした。
誰を人柱にするかという話になった時に、女の子の手毬唄を聞いていた人が父親が蔵から米と小豆を盗んだことを村人にばらしてしまいました。
そして父親は人柱にされてしまい、自分が手毬唄として歌ったために父親が処刑されたのだと悟り話すことができなくなってしまった女の子は姿を眩ましました。
数年後雉の鳴き声を頼りに雉を仕留めた猟師の前に女の子が現れ、雉も鳴かずば撃たれまいにとつぶやき雉を抱いて去っていきました。
それから、彼女の姿を見た者はいません。


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松江には、松江大橋を架けるときに人柱にされた足軽を弔う慰霊碑がありますし、松江城を築城する際、表鬼門である本丸東側の石垣が何度も崩れ落ちたため、崩れのひどいところを徹底的に掘り返したところ、錆びた槍の刺さった頭蓋骨が出現したそうで、城主であった堀尾吉晴が神主を招き丁寧に供養したところ、無事石垣を築くことができたという話が伝わっていて、ハーンが聞いたという、小豆とぎ橋に現れる幽霊も、人柱に関係があるのかも知れません。
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by sweetmitsuki | 2015-06-15 22:30 | おどろけー | Trackback | Comments(0)
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