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落語の発祥はお寺のお坊さんの説教にあるんだそうで、今では他愛のない笑い話として語り継がれているものでも、元々は恐ろしい話だったことがあるんだそうです。
大晦日の日です。 とある店の使用人が、主の命令に従って掛け取り(集金)に奔走していました。 いつもは夜遅くまでかかってしまうものなのですが、その年はどうしたことか、お客の機嫌がよくみな笑顔で支払ってくれて、夕刻には終わってしまいました。 男が店に戻ろうとすると、河岸に饅頭舟が泊めてあるのが目に入りました。 「主は俺が夜遅くまで帰らないと思っているだろう。だったらあそこでちょっと遊んでから帰ってもいいかな。」 男はそう思うと、舟饅頭を買ってから帰ることにしました。 (ここでいう舟饅頭とはお菓子のことではなくお娼妓さんのことで、宿代わりに小舟を用いていたためこう呼ばれていました。) 事を終え、帰路に就いたところで帳簿と売掛金を入れた袋を無くしたことに気付きます。 「どうしよう。死んでお詫びをしなければ。」 首を吊ろうか、大川に飛び込もうかと悩みましたが、そう簡単に死ねるものではありません。 そうこうしているうちに夜が明けてしまいました。 死ぬのは諦め、真っ青になって、昨日走り回った場所をあれこれ探してみましたが、見つかりません。 とうとう夕刻になってしまいました。 「もしかすれば、あの饅頭舟に落としたのかもしれない」 そう思って、河岸に行ってみると、饅頭舟が泊まってます。 「あ、昨日のお客さん。もしかして忘れ物を探してないですか。」 男が頷くと、舟饅頭は帳簿と集金袋を渡してくれました。 男は喜んで、お礼のお金を舟饅頭に渡そうとしましたが 「礼をされるほどのことではないですから」 と、固辞されてしまいました。 そのころ店では、男が売掛金を持ち逃げしたものだと大騒ぎでした。 そこへ男がひょっこり帰ってきたものですから主は驚いて男にどうして丸一日店に帰らなかったのか詰問しました。 男が包み隠さず正直に話すと、主は感激し 「なんていう心の正しい女なんだろう。そんな子が舟饅頭に身をやつしてるなんて可哀相だ。私が身請けしてあげよう。お前はその子と所帯を持ちなさい。暖簾を分けて、家持(独立)させてあげるから。」 話はとんとん拍子に進み、夫婦となった二人は商売も順風満帆で、あっという間に一年が過ぎていました。 その大晦日の日。 除夜の鐘を聴きながら、女房となった元舟饅頭の女が、こう呟きました。 「私は心が正しくて、あんなことをしたんじゃないの。舟饅頭の頭目は、ひどく欲深い男で、もしもあの大金を見られたら、取り上げられた挙句に私は口封じのため殺されてしまうだろうと思って、怖くて怖くて帰るに帰れず、それで貴方が捜しに来てくれるのをあの場所でずっと待ってたの。」 「そうか、あの日お前も眠れぬ夜を過ごしたのか。」 男はその話を聞くと、女をいっそう愛おしいと思いました。 二人は欲張らず、商売に励んだので、贔屓の客も増え、店は栄え、末永く幸せに暮らしたそうです。 「まんじゅう怖い」の一席、御清聴ありがとうございました。
by sweetmitsuki
| 2016-04-20 20:37
| おどろけー
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Comments(2)
Commented
by
saheizi-inokori at 2016-04-20 23:14
ちっとも恐ろしくないじゃん。
あやかりたい饅頭。 落語の「饅頭怖い」はルナールの博物誌を超えているかも。
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Commented
by
sweetmitsuki at 2016-04-21 06:24
佐平次さま
「江戸の恐ろしい話」から引用させていただいたのですけど、本当に、どこが恐ろしいんでしょう。 いかにも落語っぽい筋立てでありながら高座では聞かない話です。 落語の「饅頭怖い」は、怖いもの知らずの男が他人が怖いという生き物をことごとく食べてしまうところがオチに繋がる隠しミソですよね。
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