妖怪のうた

e0078674_1752826.jpgラフカディオ・ハーンが日本で書き継いでいった代表的な怪談と奇談を集めた「新編 日本の怪談」(池田雅之編訳 角川ソフィア文庫刊)を読んだのですが、物語もさることながら最終章でハーンが、19世紀の日本の歌人が詠んだ妖怪狂歌を海外に紹介するために英語で書いた文章を和訳しなおしたエッセイが最高でした。
欲を言えば五七五七七の三一文字という形式の定まった狂歌を、ハーンがどう英訳したのか原文も読みたかったのですが、実を言うと英語はほとんど読めないので、それはまぁいいです。
ハーンが海外に、どんな妖怪狂歌を紹介しているのか少しピックアップしてみます。
まずはハーンらしく平家蟹

味方みな 押しつぶされし 平家蟹 遺恨を胸に はさみ持ちけり

蟹が胸に「鋏」を持ってるというのと、平家の怨霊が胸(心の中)に遺恨を「挟んで」いるのとを洒落てるのにハーンは感嘆しています。
続いて、ろくろ首

つかの間に 梁を伝はる ろくろ首 けたけた笑ふ 顔の怖さよ

つかの間とは、素早くという意味ですが、天井の束柱の間とも取れます。
けたけたも、妖怪の笑い声という意味以外に、桁から桁へというようにも捉える事が出来、ちょっと深読みし過ぎな気がしますがろくろ首が長い首振り回しながら屋敷中を縦横無尽に暴れ回っている臨場感がよく表れているとハーンは感じたのでしょう。
怖い歌が続いたので、愉快な歌で終わりにしましょう。
牡丹灯篭

剥がさんと 六字の札を 幽霊も なんまいだと 数えてぞみる

これはもう、説明は不要でしょう。幽霊をネタにして、笑いを取ろうとするセンスに脱帽です。
e0078674_1728137.jpgさて、ハーン的な不思議世界というのは、現代では全く消え失せてしまったかのように見えてその実、街を歩いているとけっこうその辺に転がっているものです。
うちの近くには首継ぎ地蔵というお地蔵さまが祀られているのですが、これなんかはその一例といえましょう。
関東大震災の頃、高名な画家とその知人が、地蔵の首が落ちる同じ夢を見、もともと別々だった地蔵に 画家が大切に保管していた地蔵の首を合わせたところ不思議にもぴったりと 一致したというのがこのお地蔵様の名前のいわれです。
時に昭和の大恐慌にあたり、話を聞いた大勢の人が「クビがつながる」と 言って訪れたそうです。
日本のお化けはまだ滅んではいないのです。
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by sweetmitsuki | 2008-04-29 17:23 | おどろけー | Trackback | Comments(13)
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Commented by saheizi-inokori at 2008-04-29 20:28
ハーンは狂歌とかシャレが好きなのですね。
面白いなあ。
Commented by sweetmitsuki at 2008-04-30 07:41
佐平次さま
ハーンは一つの言葉に複数の意味を持たせるこれらの言葉遊びを「簡潔さの美学」と絶賛していて、これらの狂歌を知らずして日本文化を真に理解する事は出来ないであろうと語っています。
日本とはどういう国柄なのかを考えるヒントがいっぱい詰まっています。
Commented by マロン at 2008-04-30 12:33 x
mitsukiさん、妖怪とお化けがすきなんですね 。
マロンも素顔は、お化けって言われます ヾ(*>∀<)ノ゙キャハハッ
みつきちゃん☆のポーズとブラウスとってもカワユスですね。

マタネ♪ヾ(゚-^*)≡(((((((*゚-)ノ |EXIT|
Commented by sweetmitsuki at 2008-05-01 17:52
あかべ子さん、大切に扱われた人形は、持ち主をあらゆる災いから守ってくれますが、逆に粗末に扱われた人形は、持ち主に災いをもたらします。
これは迷信でもなんでもなく本当の話です。
以前、ビニール人形の腕を継いでくれる技士の連絡先を調べてお伝えした筈ですが、もう忘れてしまったようですね。
結構な金が掛かるのでそれ以上は口出しを控えていたのですが、一眼レフを買う金はあるのですね。
Commented at 2008-05-02 09:37
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sweetmitsuki at 2008-05-03 05:44
怒ってはいません。
心配してるんです。
Commented at 2008-05-03 11:37 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by greenagain at 2008-05-04 13:19
ハーンは、日本文化の繊細さとユーモラスどちら日本人以上に理解されているのですね。あちこち転居されたので、「けたけた」「なんまいだ」と言った言葉の響きをも楽しんでのだと思います。
彼の生涯を含めて、ハーンを調べだすと止まらなくなることがあります(苦笑)。
興味深い本です。御紹介ありがとうございました!
Commented by sweetmitsuki at 2008-05-04 20:18
みどりさま
ハーンはおかしさと怪奇さをないまぜにする日本ならではの感性に心魅かれていますが、やはりハーンの本領は、身の毛もよだつような恐ろしい話だと思います。
収録されている「因果話」などはハーンの作品の中でもかなり有名な話なのだそうですが私も今まで知りませんでした。読んだ中でこれが一番怖かったです。
Commented by xphalene at 2008-05-12 01:28 x
興味深く読ませていただきました。
妖怪って、様々な自然現象を科学的に説明できなかった昔、それを妖怪の仕業ということにした、という部分って有ると思うんです。
つまり自然への畏怖の念とか。
だからむしろ滅ぼしてしまってはいけないんじゃないかなって。^^
Commented by sweetmitsuki at 2008-05-13 05:37
xphaleneさま
ヒトは好奇心の塊で、それが未知への挑戦を生み、人類の発展をもたらし、科学的な知識の蓄積が時代遅れの迷信を淘汰していったのですが、それでも妖怪はいなくならないどころか、むしろ新たな妖怪が増え続けているような気がします。
ヘンな宗教には辟易ですが、遊び心に溢れた健全な信仰は、いつの世になってもなくならないのでしょう。
Commented by robin d gill at 2009-07-02 06:56 x
ハーンはそのGoblin Poetryという狂歌百物語のいくつかのテーマの抜粋で、狂歌についての紹介がたしかに旨かったが、歌そのものの英訳はごく平凡な説明調駄作でしかなかない。その本又、天明狂歌の百鬼夜狂の選集が最近に出した拙著Mad In Translationの中で、poemとして英訳されている。後数日Googleで全内容捜索できるようになります。 敬愚
Commented by sweetmitsuki at 2009-07-04 05:13
robin d gill さま
HP拝見させていただきました。ありがとうございます。
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