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本当は恐ろしい「はてなの茶碗」

落語の演目に「はてなの茶碗」という噺がありまして、これには天皇が登場するほか、関白・鷹司公とか鴻池善右衛門とか実在の人物が数多く登場するので、実際に起きた出来事をもとに作られたのではないでしょうか。
実在の人物とはいえ、鷹司家も鴻池家も古くから続いてる家なのでいつの時代の誰なのかといわれると即答に困るのですが、この話のラストで、油屋が「茶金はん、こんどは十万八千両の大儲けでっせ。」といってるところに注目したいです。
一合の茶碗が千両なら、一斗の水瓶は十万両になる計算で、どうして十万八千という中途半端な数字が出てくるのかわかりません。
調べてみますと天明の飢饉のとき幕府は大阪の豪商に困民救済のため御用金を供出するよう命じており、鴻池家は銀千八十貫目を献上したという記録があり、108という数字はここからきてるのではないでしょうか。
そもそも、ひび割れしてないのに水が漏る茶碗というのは、真面目に働いてるのに金が貯まらない人を暗示していて、つまり油屋ははてなの茶碗そのものです。
当時(今でも)油屋のような身の上の人はたくさんいましたから油屋ひとりが大金を得てそれで終わりというのは不公平で、金持ちは貧乏人の生活改善のために少なくともその108(煩悩の数ですね)倍の金を出すべきだというのでしょう。
そして関白・鷹司公ですが、公家の中でも関白に任官されるのは、近衛・九条・二条・一条・鷹司の五摂家だけなのですが鷹司家はマイナーな家柄であんまし関白を出していません。
ところがこれも天明の飢饉のとき、光格天皇は関白・鷹司輔平を通じて幕府に窮民救済をするよう書簡を送ったという記録が残っているので、「はてなの茶碗」に登場する時の帝とは光格天皇で間違いないでしょう。
つまり、「はてなの茶碗」とは滑稽な笑い話ではなく、天明の飢饉のとき、農村では餓死者も出るほどの惨状だったのに、都市に住む一握りの富裕層は骨董品の収集に千両の大金を惜しみなく散財していたことを嘆いた社会への風刺なんじゃないでしょうか。
と、まあ好き勝手に喋り散らかしてしまいましたが、「はてなの茶碗」をそのように解釈する論説はなく、いつものように私が勝手に落語の筋書きに史実を繋ぎ合わせただけなのですけど、優れた落語作品というのはその気になればどのようにでも深読みすることができ、だからこそ現代にまで語り継がれているのでしょう。

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by sweetmitsuki | 2017-04-30 08:24 | おどろけー | Trackback | Comments(2)




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